東日本大震災による福島第1原発事故の影響で、新生児・乳児飲用の基準値である100ベクレルを上回る「放射性ヨウ素131」が東京、埼玉、千葉、福島の水道水から検出されました。
この為、スーパーやコンビニなどの店頭ではミネラルウォーターが売り切れたり、通販サイトがサーバーダウンする事態となっています。
この問題を受け、東京都は24日、備蓄しているミネラルウオーターから24万本を、0歳の新生児・乳児用に配布しました。
1歳未満の新生児・乳児は、特に注意
水道水に含まれている放射性ヨウ素は、大人に対する暫定規制値(乳児以外は300ベクレル)は下回っているものの、厚生労働省は、赤ん坊(新生児・乳児)への飲用は控えるよう求めています。
以下、厚生労働省のサイトからの抜粋です。
「乳児による水道水の摂取に係る対応について」
水道水の放射性ヨウ素が100Bq/kgを超える場合の水道の対応について、乳児用調製粉乳を水道水で溶かして乳児に与える等、乳児による水道水の摂取を控えること等について、各都道府県水道行政担当部局長及び水道事業者に対して通知
指標値を超える水道水を一時的に飲用しても健康影響が生じる可能性は極めて低く、代替飲用水が確保出来ない場合には飲用(乳児による水道水の摂取を含む)しても差し支え有りません。また、手洗い、入浴等の生活用水としての利用は可能です。
引用ここまで。
一時的な飲用や、お風呂と言った生活用水への使用なら、健康影響が生じる可能性は低いものの、汚染された水道水を長期間飲用すると、新生児・乳児の場合は健康に悪影響を及ぼす様です。
乳児が、幼児・小中学生などに比べて放射能の影響を受けやすい理由ですが、厚労省によると「甲状腺はホルモンを作るためにヨウ素を取り込んでいて、乳児は特に甲状腺の細胞分裂が活発でヨウ素を取り込みやすく、発達段階にあるため放射線に対する影響を受けやすい」との事です。
厚生労働省はミルクだけで栄養をとっているこどもは、年齢に関係なく水道水を控えるべき「乳児」ととらえています。
放射性物質 正しい対策
以下に、ヨウ素やセシウムなどの放射性物質に対する正しい対策を挙げてみます。
○ 赤ちゃんの粉ミルクを、市販のミネラルウオーターで作る
東京都が24万本のミネラルウオーターを乳児用に配布している事から察しが付くと思いますが、スーパー・コンビニ・ネット通販で売られている市販のミネラルウオーターには放射性物質は含まれておらず安全です。
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なお、普通の「軟水」のミネラルウオーターは粉ミルク様に使用してOKですが、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルを多く含む「硬水」は、下痢になるなど新生児・乳児の体に負担がかかるので避けた方が無難です。
「硬水」は、一般に日本人の口には合わないといわれていて、中にはお腹を壊してしまう人もいるので、現在日本で販売されている「ミネラルウォーター」の大半は「軟水」のミネラルウォーターとなっています。
○ ウォーターサーバーや、RO逆浸透膜式浄水器の水を使う
アクアセレクト、クリティア
、クリクラなどのウォーターサーバーの水は、RO膜で濾過されているうえ、軟水なので乳児に与えても安全です。
以下、アクアセレクトのサイトからの引用です。
アクアセレクトの天然水に放射性物質は確認されませんでした。
分析試験の結果、アクアセレクトの天然水に放射性物質は確認されませんでした。
飲料水として乳幼児をはじめ、あらゆる方々に安心してご利用いただけます。依頼者: 株式会社Beautiful Life検体名: 天然水アクアセレクト 11.35L検体提出日: 2011年3月23日試験依頼先: 財団法人日本食品分析センター試験成績書発行年月日: 平成23年3月28日試験成績書発行番号: 第11025273001-01号
以下、クリクラのサイトからの引用です。
放射性物質に対する見解
1.放射性物質について
クリクラでは、原水に対し逆浸透膜(RO膜)による精密ろ過処理を行っております。基準値範囲であっても僅かな放射性物質(ヨウ素、セシウムなど核種で放射線を出す物質)が含まれる場合、RO膜の細孔(穴の大きさ)と放射性物質の大きさから判断して、理論的に除去が可能と考えられます。
次に、クリクラの製造に使用するボトルは充填直前に洗浄・殺菌され、原水が直接外気に触れることなく密閉式タンクから配管を通じてクリクラボトルに充填されております。
充填室内の空気はHEPA(ヘパ)フィルターなどの精密フィルターを用いて外気の清浄化を行っておりますので、製造室外部から放射性物質の汚染はないと判断されます。
同じく、クリクラからのメールより引用です。
先日、当社の放射性物質に対する見解をご案内させて頂きましたが、
この度、第三者機関の調べにより、クリクラ水に放射能物質が確認されなかった
ことが判明致しましたので、ご報告申し上げます。●クリクラ水に放射性物質は確認されませんでした
結果報告の見解
下記の測定結果により、クリクラ水に放射性物質が含まれていないことが判明いたしました。
飲料水として乳幼児も含みご安心してご利用いただけます。クリクラ水測定結果
1.試料:クリクラ品川プラント製品水
採取日時:2011年3月24日AM10:042.測定日時:平成23年3月26日 21時55分
3.測定結果
放射性ヨウ素(I-131):検出されず
放射性セシウム(Cs-134,136,137,の総量)検出されず※株式会社 化研(放射性同位元素等使用許可番号水使第176号)調べ
引用ここまで。
RO膜(逆浸透膜)は非常に目の細かい膜で、中東などの砂漠ばかりで慢性的に水不足の国では、RO膜で海水を濾過して真水を作り出して水道として使っています。
つまり、RO膜は海水に含まれている食塩(塩化ナトリウム)を濾過して除くことが可能です。
一方、問題になっているヨウ素やセシウムは原子の中ではかなり大きいです。
科学技術週間のサイトに掲載されている元素周期表を見れば分かりますが、食塩(塩化ナトリウム)のナトリウムは11番、塩素は17番です。
さらに今回問題になっているヨウ素は53番、セシウムは55番ですからナトリウムとか塩素よりもずっと大きな元素です。
要するに食塩を除くことが出来るレベルの膜で濾過しているのですから、ヨウ素やセシウムは理論上、ほぼ100%完全に除去されていると言う事になります
但し、逆浸透膜でも目の細かさはメーカーの技術力によって違います。アクアセレクトなどがウォーターサーバーの水を作るのに採用している高価な逆浸透膜は、食塩、ヨウ素・セシウムなどの放射性物質を殆ど除くことが可能です。
一方、右の写真の様な一般家庭用のRO逆浸透膜式浄水器の場合、ヨウ素、セシウムなどの放射性物質は完全とまでは言えないものの、85~95%程度除去する事が出来る様です。
○ 汲み置きした水を使う
放射性ヨウ素は半減期が有るので、放っておけば8日間で半分になります。16日経てば4分の1、24日経過すれば8分の1です。
半減期は、密封しても冷凍しても変わりません。
セシウム137は半減期が30年以上、プルトニウム239に至っては半減期が約2万4,000年と長いので放置しても簡単に無くなりませんが、ヨウ素は半減期の短い放射性元素なので時間が経過すれば必ず消えてなくなります。
今、水道水から検出されている放射性物質の中で、暫定規制値をオーバーしているのはヨウ素だけです。よって、水道水でも冷蔵庫に入れて冷やしたり、
冷凍庫で凍らせて保存し、時間が経ってから使えば安全です。
○ 粉ミルクでは無く、母乳を与える
日本産婦人科学会の発表によると、母乳に含まれる放射性ヨウ素は、母体の摂取量の4分の1程度になるので、現在の放射性物質の水準なら母乳は安全です。
又、妊娠中の女性が軽度汚染水道水を連日飲んでも、妊婦・赤ちゃん(胎児)に健康被害は起こらないと推定されます。
ソースはこちら。水道水について心配しておられる妊娠・授乳中女性へのご案内
ただし、母体の放射性ヨウ素の摂取が、乳児飲用の基準値の4倍を超えてしまうと理論上、母乳も危険になります。
放射性物質 間違った対策
以下に、間違った対策を挙げてみます。
× RO膜を採用していない安価な浄水器で、放射性物質を除去する
ヨウ素やセシウムと言った放射性物質は、活性炭や中空糸膜で濾過する市販の数千円程度の安い浄水器では、ほとんど除去出来ません。
ただ、ヨウ素は活性炭に付きやすい性質を持っているので、浄水器のフィルターに活性炭が入っていれば、僅かながらヨウ素を減らす効果は有ります。
セシウム137は活性炭では取れないものの、水の濁りを取る中空糸膜で、多少は濾過できる可能性が有ります。
× 放射性物質を、煮沸消毒する
水の沸点は100度、ヨウ素の沸点は約184度、セシウムの沸点は600度以上、プルトニウムの沸点は3230度なので、水を沸騰させても無意味です。
と言うか放射性物質が煮詰まるので、むしろ逆効果です。
なお、中央日報などの一部の新聞や、東大病院放射線治療チームのコメントには
「水道水の中に放射性物質が含まれていても、ヨウ素131は揮発性が強く、沸騰させればなくなる。」
と言った誤った情報が書かれていますが、これは固体状のヨウ素分子(I2)の場合で、水中に存在するヨウ素は煮沸しても無くなりません。