日銀砲(金融用語)
日銀の為替介入
日銀砲(にちぎんほう)とは、日本銀行(日銀)による外国為替市場介入を指します。
日銀総裁「こりゃイカン!凄い円高だ。円売りドル買いの市場介入を発動!」
日銀砲はネットの俗称
日銀砲は、主に2ch(2ちゃんねる)と言ったネットのFXや株などの投資関連の掲示板で使われている造語です。
日銀職員「投機的なヘッジファンドを攻撃する為の武器なので、日銀砲と言う通称が付きました。」
日銀砲は正式な金融用語では無いので、パソコンやスマホで「にちぎんほう」を変換すると、実在する金融用語の「日銀法」に誤変換される事が有ります。
日銀砲の正式名称
日銀砲は、正式には「為替介入」もしくは「外国為替平衡操作(がいこくかわせへいこうそうさ)」と言います。
為替介入 実施理由
日本の輸出産業の利益確保
日本は「加工貿易」を主要産業の1つとしている国です。
作業員「加工貿易とは、海外から原材料を輸入し、国内で加工して海外に輸出する貿易です。」
従って「円高ドル安」だと・・
女子高生「日本の輸出企業※が海外でいくら稼いでも、利益が減少します。」
- 自動車メーカー
トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業など。 - ハイテク企業
パナソニック、シャープ、ソニー、キヤノンなど。
円安ドル高の場合
円高ドル安の場合
女性「円高ドル安の時にドルを円に両替すると、金額が目減りします。」
男性「な・・・なんだってー! 」
円安ドル高の方が有利
女の子「1ドル=110円の円安ドル高なら、1ドルで日本の110円のハンバーガーが購入出来ます。」
男性「日本で110万円の車も、1万ドルで購入出来ます。」
しかし「1ドル=100円の円高ドル安」の場合、1ドルが100円の価値しか有りません。
女性「従って日本の商品が割高になり、外国人は日本の商品を買わなくなります。」
つまり「円安ドル高」の方が、日本の輸出企業には有利です。
女性「急激な円高になると、日本銀行が円売りドル買いの市場介入を行い「円安ドル高」に為替操作します。」
日銀の介入は、ヘッジファンド(投機筋)の円買いドル売り(ショート)を阻止する意味も有ります。
日銀職員「投機筋を拘束したわ!」
投機筋「うっ動けん!」
クロス円の影響
ユーロ円などもユーロ高に
女性「円売りドル買いの市場介入によって円安ドル高になった場合、連動してユーロ円などのクロス円通貨ペアも円安ユーロ高になります。」
日銀砲 為替介入 過去
実際に日銀砲が使われた例として、2011年、2010年、2004年に日銀による大規模な為替介入が有ります。
2011年10~11月
2011年10月28日から同年11月28日にかけて、日銀が外為市場で9兆916億円の円売り介入を行っています。
2011年10月31日(月)午前10時25分頃からの大規模な円売り・米ドル買いの為替介入では
米ドル/円 約75.6円(介入前)
↓
米ドル/円 約79.0円(介入30分後)
介入後は約30分で、3円以上も円安ドル高になりました。
介入で3円も
円安になるのね!
日銀砲の名は
伊達じゃないわね。
覆面介入
2011年11月1日から4日は、円売り介入の実施を公表しない「覆面介入」が1兆円規模で行われています。
2011年03月18日
2011年03月18日(金)、7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)が円高阻止に向けた協調介入で合意し、主要国中銀の円売り介入の実施が決定しました。
日銀が、午前9時頃から大規模な円売りドル買い介入を実施した結果、米ドル/円レートは2011年3月17日につけた過去最安値の1ドル=76.25円から、一時81.83円まで急反発しました。
2010年9月
2010年9月15日 AM10:35分頃、日銀が6年半ぶりに日銀砲(単独介入による為替介入)を実行しました。
↓スマホで見づらい方は、ピンチアウト(画面を二本の指で広げる動作)で画像を拡大して下さい。
日銀による介入の結果、米ドル/円は82円台から85円台、ユーロ/円は108円近辺から111円台まで上昇する効果を発揮しました。
この時も約3円ほど
円安ドル高になってるっスね。
3円の円安が日銀の目標
だったのかも知れませんね。
2004年
下は、2004年の日銀砲のチャートです。
2003年8月頃から投資ファンドは、イラク情勢の影響により大幅な円高ドル安が来ると考えて世界中から資金を集めて円買いをしました。
この影響で、1ドル117円前後の円相場(対ドルの為替レート)は105円まで一気に急騰しました。
これに対して日銀は、1日1兆円規模という巨額の円売り介入(日銀砲)を毎日続け、「ハゲタカファンド(ヘッジファンド)を殲滅した」という伝説が当時の読売新聞で語られています。
以下、2004年6月1日 読売新聞より引用です。
◆投機筋を徹底排除
財務省が31日発表した5月(4月28日―5月27日の速報値)の外国為替市場への円売り・ドル買い介入額は4月に続いて2か月連続でゼロとなった。昨年度に32兆円を超える空前の円売り介入が行われたのに、なぜ介入がぴたりとやんだのか。巨額介入の裏側には、ヘッジファンドと呼ばれる投機筋と政府・日本銀行の激しい攻防に加え、デフレ克服に向けた政府の強い意向があった。(黒川 茂樹、文中敬称略)
■攻防
「投機筋の円買い圧力が強い。きょうの介入は1兆円を超えそうです」
1月9日朝、財務省大臣室。国際局の幹部は、財務官の溝口善兵衛が立案した介入方針を、財務相の谷垣禎一に淡々と説明した。
円相場は1ドル=105円台目前まで来ている。谷垣に迷いはなかった。ゴーサインを受けた日銀のディーリングルームから、切れ目なく10億円単位の円売り注文が出された。
「財務省はいくらドルを買ったら気が済むんだ。介入資金が底をつくぞ」
大手銀行担当者の読み通り、財務省は介入枠を使い切ったが、保有する米国債を日銀に売却して5兆円の介入資金を調達し、午後2時ごろには1度に5000億円規模の円売り注文を出した。この日の介入額は、ドル買いでは史上最大の1兆6664億円に達した。
■発端
財務省幹部は「円安誘導では無く、投機筋の動きを粉砕するためだった」と証言する。
勝負の発端は、円相場が1ドル=117円前後で落ち着いていた昨年8月。投機筋はイラク情勢の悪化などを材料に「日本政府がいくら介入しても、1ドル=100円を超す円高になる」と世界の投資家から巨額資金を集めていたのだ。
9月20日のドバイG7(先進7か国財務相・中央銀行総裁会議)の声明には「為替の柔軟性が望ましい」と日本の介入にクギを刺す表現が盛りこまれた。投機筋はさらに、円買いをしかけてきた。投機筋の思うつぼになれば、回復しかけた景気が腰折れしかねない。
■反撃
財務省は大みそかも含めて年末、年始に15営業日連続で介入を続けて円高を食い止め、2月のG7での相場反転を狙った。1月22日、谷垣は日銀総裁の福井俊彦と会談し、「デフレ克服に向け、日銀の量的緩和と政府の介入政策は整合的だ」との認識で一致し、投機筋をけん制した。2月に米ボカ・ラトンで開かれたG7声明では、日本の強い主張で「過度の相場変動に懸念」が示された。
しかし、別の資金力のある投機筋が円高への誘導を狙って円買いを仕掛け続けた。政府・日銀は相場の基調が円安に反転した2月下旬以降も、1ドル=110円付近になるまで連日押し下げ介入を続け、徹底的に投機筋を排除した。ほとんどの投機筋は、3月上旬に利益が得られないまま取引を手じまいせざるを得なくなった。目的を達した財務省は、3月16日以降介入をとりやめた。
これと相前後して、米財務長官ジョン・スノーが米国で介入をけん制する発言をしたが、溝口は米財務次官のジョン・テーラーに、ほぼ毎日電話で介入を通告していた。国際金融筋は「介入の最中には米側は中止を求めなかった。介入の目的を達したのを知った米財務省が、国内向けに発言したのでは」と解説する。
■真相
しかし、市場では、巨額介入は、円安への誘導による景気てこ入れを狙った脱デフレの“切り札”だったとの見方も根強い。現在の景気回復局面では、政府の大規模な介入政策と、日銀による量的金融緩和が車の両輪の役割を果たしてきた。日銀は、いったん市場に放出した円を吸収しない非不胎化政策をとり、市場に潤沢に円資金を放置し続けた。日本は、介入で得たドルで米国債を大量に購入したが、これも米国の財政赤字を穴埋めし、米国経済の下支え役を果たした。東短リサーチのチーフエコノミスト、加藤出は「財政出動ができず、金融緩和も限界の中で輸出産業を支える一種の“公共事業”だった」と見ている。
量的緩和による超低金利のおかげで、財務省は市場からほぼゼロ金利で介入資金が調達できた。日本経済がまだデフレを脱却出来ないなか、1月22日の谷垣・福井の合意は、なお重い意味を持っている。
日銀砲って、てっきり
宇宙戦艦ヤマトの波動砲
みたいな物かと思ったわ。
波動砲じゃヘッジファンド
どころか
地球がフッ飛ぶわよ。
関連サイト
日本銀行
為替介入に関しては、以下の日銀の公式サイトも参考になると思います。
財務省
財務省のサイトでは、過去の介入実績の全データのCSVが公開されています。
コメント
日銀の介入実績のチャートも併せて載せた方がいいと思います。
実際には介入は2003年8月あたりから本格的に始まってますし介入終了は3月初めで4月の終わりではありません。円安に介入がタッチしたといえるのは112円までです。
介入実績チャートと当時のチャートを照らし合わせてみれば介入が円安誘導にほとんど効果を挙げていない事も、HFが倒産した云々が都市伝説の類であることも良く分かりますよ。
アキレスさん、こんにちは。
>介入実績チャートと当時のチャートを照らし合わせてみれば介入が円安誘導にほとんど効果を挙げていない事も、HFが倒産した云々が都市伝説の類であることも良く分かりますよ。
確かにアキレスさんの指摘の通りです。
新聞には
>1ドル=110円付近になるまで連日押し下げ介入を続け、徹底的に投機筋を排除した。ほとんどの投機筋は、3月上旬に利益が得られないまま取引を手じまいせざるを得なくなった
とあるのですが、実際は介入中も為替は円高方向に傾いています。
上の私の記事は、少し訂正する必要がありそうですね。