FX 新レバレッジ規制
金融庁は2018年5月30日、FXの取引倍率(レバレッジ)を抑える規制の強化を見送る方針を明らかにしました。
レバレッジの上限は25倍のまま据え置く代わりに、業者の健全性を調べる特別検査(ストレステスト)の頻度を高めるとの事です。
以下の記事は、レバレッジ規制見送り前に書いた情報です。
2017年(平成29年)9月27日の日本経済新聞電子版に「金融庁はFXの証拠金倍率(レバレッジ)を引き下げる検討に入った」との報道が掲載されました。
2018年(平成30年)2月13日には、店頭FX業者の決済リスクを議論する有識者会議を立ち上げ、規制強化策が議論されました。
以下、金融庁のサイトからの引用です。
「店頭FX業者の決済リスクへの対応に関する有識者検討会」(第1回)議事次第
日時:平成30年2月13日(火)10時30分~12時00分
場所:中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室
引用ここまで。
FXって何?と言う方は、以下の記事を参照して下さい。
レバレッジって何?と言う方は、以下の記事を参照して下さい。
レバレッジ25倍→10倍に
FXのレバレッジが規制により何倍に下げられるかですが、日本経済新聞の報道によると
女性「現行のレバレッジ25倍から、レバレッジ10倍程度に下げる案が有力」
となっています。
25倍→10倍の図解
現行のレバレッジ25倍なら、4万円の証拠金で100万円分の取引が出来ます。
ところがレバレッジ10倍に制限されると、同じ4万円の証拠金で40万円分の取引しか出来なくなってしまいます。
単純計算でFXで取引出来る金額が5分の2に減ってしまいます。
10倍で100万円分取引するには?
レバレッジ10倍で、レバレッジ25倍の時と同じ様に100万円分の取引をしたい場合は10万円の証拠金が必要となります。
女性「つまり、レバレッジ25倍に比べて6万円余計に証拠金が必要になるのよ。」
男性「ま、マジッすか~」
くりっく365もレバレッジ規制対象?
前回の旧レバレッジ規制は、店頭FX 相対FXだけでなく、「くりっく365」などの取引所FXも同じ様に適用されました。
従って、過去の例や投資家保護の点から考えると今回も同様の可能性が高いと思われます。
ただし、2018年(平成30年)2月13日の金融庁の事務局説明資料(pdf)の5ページ目以降を見ると、店頭FX業者の決済リスク(未収金の発生リスク、カバー取引先の破綻リスク、未カバーポジションに対するリスク)が指摘されています。
その点から考えると、例えば「くりっく365のレバレッジは15倍」と言った様に「くりっく365」が多少優遇される可能性も僅かながら有ります(当ブログ管理人の個人的な感想です)。
金融庁からの回答
今回の新レバレッジ規制の報道に関して、FX業者のマネーパートナーズグループが金融庁に確認した結果が同社のサイトに掲載されています。
以下、マネーパートナーズグループのサイトからの引用です。
平成29年9月28日
本日の一部報道について
日本経済新聞において、FX(外国為替証拠金取引)の証拠金倍率引き下げに関する報道がなされておりますが、金融庁に確認したところ以下のとおりでありましたのでお知らせします。
記
- 証拠金倍率引き下げについては、個人投資家保護や金融機関が想定外の損失を被るリスク等の観点から様々な議論があるのは事実である。
- 証拠金倍率の引き下げを行う場合は、業者や業界に働き掛けて意見を聞き、手順を踏んで行うものであり、金融庁が一方的に行うということはない
以上
引用ここまで。
引用元はこちら(pdf)
金融庁の回答には「金融庁が一方的に行うということはない」と有ります。
しかし前回のレバレッジ規制の時は、709の団体・個人のうち9割が反対にも関わらず、金融庁の案(2010年8月最大レバレッジ50倍、2011年8月最大レバレッジ25倍)そのままで可決されました。
ですから今回の新レバレッジ10倍規制も、金融庁が形式だけのパブリックコメント(意見公募)を募集して結局、金融庁の案「レバレッジ10倍」のまま可決される可能性が高いのでは無いかと思います。
レバレッジ規制 いつから
2018年春に新レバレッジ規制施行?
新レバレッジ規制が、いつから導入されるかですが、2018年2月12日の日本経済新聞の記事によると「金融庁は2018年春にも外国為替証拠金取引(FX)のレバレッジ規制を強化する方針」との事です。
なお、新レバレッジ規制導入の具体的な日時は今の所、決まっていません。
新レバレッジ規制が施行される正確な年月日が分かり次第、この記事に追記します。
規制開始日はFX業者によって異なる?
「店頭FX」及び「くりっく365」の個人口座のレバレッジは2010年(平成22年)8月から50倍、2011年(平成23年)8月から現行の25倍に制限されました。
ただ、これは金融庁が
と定めた日程なので、レバレッジ規制の導入時期が早いFX業者も有ります
例えば、外為どっとコムの個人口座の場合は、2010年7月12日から最大レバレッジが100倍から50倍に制限されました(法人口座を除く。)
ですから2018年のレバレッジ規制も、同様のケースが想定されます。
レバレッジ規制 理由
レバレッジ規制導入の理由ですが「外国為替相場が急変動した際、個人投資家や金融機関が想定を超える損失を抱えるリスクが高まっている」のが理由です。
現行のレバレッジ25倍では為替相場が大きく変動した場合、証拠金の大半を失ったり、最悪の場合はロスカットが間に合わず証拠金がマイナスになる可能性が有ります。
そうなった場合、ミセスワタナベやキモノトレーダーと言ったFX初心者が追証の支払い(借金)を抱えるケースも考えられます。
ミセス渡辺「あ”あ”あ”あ”~私のポジションがぁ~!」
その為「金融庁はレバレッジ10倍程度なら安全」と考えている様です。
豪ドル円の乱高下
個人投資家に人気のある豪ドル円は過去に1日で12.5%変動した事が有ります。この場合、レバレッジ8倍以上で証拠金がゼロになってしまいます。
スイスショックでユーロスイス暴落
2015年1月15日の「スイスフランショック」では、2011年9月から実施していたスイス中央銀行 ユーロスイスフラン EUR/CHF 無制限介入を2015年1月15日に突然撤廃しました。
その結果、ユーロスイス相場は一時41%の急落となり、金融市場は大混乱しました。
とは言え、金融のプロでも何でも無い当ブログ管理人ですら、以下の記事で「ある程度予測していた」事なので、「寝耳に水」と言う事態では無かったと思います。
「スイスショック」は、最大25倍のレバレッジ規制施行後でしたが、ロスカットが間に合わず証拠金がマイナスになる人が世界中で続出しました。
日本のFX業者の未収金は個人投資家で1000人以上、未収金の合計は約34億円以上に上りました。
東日本大震災の様な震災リスク
東日本大震災前日の2011年3月10日、1ドル=82.97円だった為替レートが1週間後の3月17日には、1ドル=76.25円の急激な円高ドル安になりました。
僅か1週間で6.72円(8.1%)もドル円レートが動いたことになります。
急激な円高によってロスカットが間に合わず証拠金がマイナスになった事により、FX業者の未収金の発生件数は2011年3月で1万件、未収金の合計は16億円を超えたそうです。
北朝鮮とアメリカの戦争リスク
仮に、北朝鮮とアメリカが戦争になった場合、急激な為替の変動が考えられます。
さらに北朝鮮が日本やアメリカに核ミサイルを撃ち込んだ場合、前例の無い程の為替の乱高下も有り得ます。
そうなった場合、レバレッジが10倍どころか5倍、もしくは株の信用取引と同じ3倍程度になる可能性も考えられます。
レバレッジ規制 影響
FX業者の業績悪化
2010年及び2011年のレバレッジ規制では、FX業者の取引高が減少して業績が悪化し、多くのFX業者が廃業や統廃合に追い込まれたので、今回も同様のケースが想定されます。
FX取引をしない方でも、FX業者の株を持っている方やFX関連サービスを手掛けている会社の株を持っている方は要注意です。
なお、国内FX業者の場合は「突然潰れて、お金が帰って来なくなる」と言った事は基本的に有りません。
詳しくはFX業者 倒産 破綻 廃業 潰れた場合を参照して下さい。
FXキャンペーン減少・条件悪化
前回のレバレッジ規制では、FX業者の業績悪化によりキャンペーンの条件が悪くなりました。
レバレッジ規制前は口座開設して入金するだけ、もしくは入金して1回取引するだけで五千円~数万円貰える「口座開設キャンペーン」が年中有りました。
女性「FX会社のみんな!オラに現金を分けてくれ~!!」
さらに、既存のユーザーでも入金するだけ、もしくは入金して数回取引するだけで数万円~数十万円貰える「入金キャンペーン」も時々有りました。
しかしレバレッジ規制後では、そういった大盤振る舞いのキャンペーンは皆無です。今後はさらにキャンペーンの条件が悪くなる事が予想されます。
規制導入直後にロスカットされる
レバレッジ規制導入前からポジションを保有している場合、レバレッジ10倍以下のポジションに関しては規制導入後もそのまま引き継がれます。